ドル/円相場は、79円台中盤まで切り返す展開になっている。米雇用統計発表直後の6月1日には、一時77.66円までのドル安・円高となった。ただ、その後は欧州情勢を取り巻くパニック状態が収束に向かっていることや、米追加金融緩和期待の剥落を受けて、ドル安・円高是正の動きが優勢になっている。80円の節目を回復するには至っていないが、円売り介入に対する警戒感もあり、短期筋がドルのショートカバーを進めている。
6月7日にはバーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長の議会証言が行われたが、結果的には米追加金融緩和を見込んでいた向きにとっては失望的な結果に終わった。「必要に応じて行動を取る準備が整っている」と将来的な追加金融緩和には含みを持たせる発言を行っているが、6月19~20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での追加金融緩和に向けては、特に積極的な姿勢は見られなかった。6月末で現行のツイスト・オペが期限切れを迎える中、ツイスト・オペの延長といった緩和策が導入される可能性は残る。ただ、FRBのバランスシート(保有資産)に直接的に働きかける量的緩和第3弾(QE3)が実施される可能性は低いと言わざるを得ず、米雇用統計後にQE3期待で拡大していたドルショートは、巻き戻しを迫られている。いずれかの時点でQE3が必要とされる地合に変化はないとみているが、行き過ぎた期待感は是正する必要がある。
一方、欧州債務問題に関しては、スペインの銀行に対する支援の動きが本格化していることで、リスクは軽減されている。ただ、17日にギリシャの再選挙を控え、スペインの国の財政環境に対する懸念が緩和される訳ではないことを考慮すれば、リスク投資環境が著しく改善するとは考えづらい。円高優勢の相場環境に変化はないとみている。
今後1週間の予想レンジは、78.50~80.25円。